•  
  •  

いまさら「くりぬき法」?

最近、粉瘤の手術で「くりぬき法」をやっていますかという質問を、電話やメールで受けることがしばしばあります。
ネットでも、「くりぬき法」がなんだかすごい手術法で、なかなかできる先生が少ないように語られている場合があり、できる先生を探してそこでの手術を希望されて行かれる方がおられるようです。
「くりぬき法」自体は30年ほど前に、近畿の形成外科医の間ですごく流行った古い手術法です。手技としては、粉瘤に小さな穴をトレパンという道具で開け、そこから粉瘤の内容物を取り出し、それと一緒に嚢胞という粉瘤本体である袋を取り出してしまうという簡便な方法です。
私も大阪大学の形成外科で、多くの患者さんの粉瘤をこの方法で手術してその結果を学会で発表していました。私は、そのころまだ研修医で、研修医でもできる簡単な方法ということで私たち若手研修医が担当していたのです。
実際、簡便な方法で、時間がかからず誰でもできるということで、流行りそうな感じの手術でした。
ただ、やっていくうちに色々と結構重大な不具合が見つかったりして、一部を残して徐々に廃れていきました。
そこで、いわゆる「くりぬき法」の長所と欠点をあげてみたいと思います。
長所

1.縫合を必要とせず、特殊な縫合技術を必要としない。またそのため短時間で摘出可能である。(研修医の先生でもできます)
2.傷跡が直線状にならないため、目立たないことがある。

短所

1.傷跡が円形に残って、不自然な感じを与える場合がある。(このことで困って、当院に修正に来られる方がおられます)
2.過去に化膿を起こした粉瘤では、嚢胞が取り切れないで残り、再発しやすい。
3.嚢胞をはがすときに出血した場合(しばしば起こることです)、開けた穴が小さいため電気メスが入らないため、止血しにくい。(私は手術後にすごい出血を起こして病院に帰ってこられ、結局大きな切開をすることになってしまった患者さんを経験しました。)

結局、以上のような理由で、徐々にくりぬき法は廃れていきました。
よって、経験豊富な皮膚腫瘍外科指導専門医の先生が患者さんを選んで行うにはよい方法だと思われますが、経験の浅い先生が行うととんでもない結果を残します。
最近、「くりぬき法」を、いかにもきれいな傷跡が残る(傷跡が残らない?)手術方法として宣伝される先生がおられるようですが、要注意です。
粉瘤は皮膚腫瘍外科指導専門医の先生にかかるようにしてください。


« »