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陥入爪治療とその料金

皮膚腫瘍治療とは、直接関係がないのですが、最近、皮膚科・形成外科の治療を行っていて、少し気になったことがあったので、コラムを書いてみようと思います。

つい最近、陥入爪になっている巻き爪の患者さんが来られました。

ずっと、治療を続けていて、治療している間は、まあまあ症状が改善するのだけれど、やめるとすぐに元に戻ってしまって、痛みがぶり返すので、何とかなりませんか?という、内容でした。

今は、どんな治療をしておられるのですか?と尋ねると、医療機関ではないところで、形状記憶プレートを使って治療をしているとのことでした。

効果はあるのですかと尋ねると、効果はあるのだが、月に一度のわりでプレートの交換があり、それらを含めて、月に約15000円、年間で約18万円かかるとのことでした。

正直、料金にびっくりしました。

私は、昭和61年から、皮膚科と形成外科の修行を始め、その時から、巻き爪の治療を(プレートやワイヤーを使った治療が存在しなかったので)手術によって行ってきました。

当時は、鬼塚法という、メスなどを使って爪母という爪を作る部分を除去するという手術方法が主流で、手術後の痛みが強く、あまり患者さんの評判がよくありませんでした。

確か、昭和63年に、フェノール法という薬剤を使って治療する方法が学会で発表されました。術後の痛みがほとんどないということで、大阪大学で本当にたくさんの手術を行いました。

上司の先生から、たくさん手術を行って、学会発表や、論文を発表しなさいとの指示があり、300人くらいの方に手術を行い、効果や痛み、再発率などをまとめて発表し、論文化しました。

その時の結果は、再発率2%、術後の痛みはほとんど無いとのことで、今後はこの方法をメインで手術を行っていくこととしました。

その後、20年ほど前に形状記憶のワイヤーやプレートが発表され、それらも自身の治療に取り入れていきました。

ただ、これらは、自費治療になり、手術よりは高額になりますので、その方の状況で、手術とワイヤーやプレートを選択しています。

令和1年に、雑誌(mook)の依頼もあり、爪の治療、一般の解説をしています。

さて、本題の陥入爪治療と、その代金についてですが、主な治療方法ごとにざっとまとめていきたいと思います。

①薬剤による治療

軽度の陥入爪では、薬剤のみで、陥入爪が治ります。

お手軽で患者さんには喜ばれますが、再発することが多いことと、どうしても治せない症例が存在します。

料金は、健康保険の診察と薬剤料金のみとなります。

健康保険の3割負担で合計で2千円~3千円くらいでしょうか。

②ワイヤーやプレートによる治療

マチワイヤー、プレートなどによる治療は爪を、形状記憶のワイヤーやプレートなどによって曲がりを矯正することによって陥入爪の治療を行います。

利点としては、爪の形を変えずに矯正ができることで、足の爪の形が変わることがイヤ、という、若い女性などに人気があります。

欠点としては、自費診療になるため、当院では初回に12000、次回より施術のたびに1か所あたり2千円がかかります。

他の医院や、整骨院では数十万円かかるところもあるようです。

また、再発率が25~35%ほどあることや、施術中に、プールなどに行くと、脱落することもよくあります。

③手術による治療

爪を1/7ほど切除し、爪母を薬品で焼くことにより巻き爪を永久になくします。

料金は健康保険の3割負担で、1か所約7500ほどです。再発率は1%ほどです。つまり、ほとんど1回の手術で巻き爪から解放されます。

また、この手術は、手術の翌日、1日ほどの安静と当日の入浴禁止を必要としますが、あとは特に制限もなく、1週間ほどで、運動も可能です。

欠点としては、爪の幅が狭くなるので、女性で爪をファッションの一部と考えたい人には適さないことです。

まとめ

巻き爪の治療には、色々な方法があります。

私は、35年前より数千人の患者さんの治療を行ってきました。

最近は、ワイヤーやプレートを使って、医院以外の施設でも、治療が行われるようになりました。

ただ、皮膚腫瘍と同様に、本来の専門は形成外科が担当しています。

我々、形成外科専門医は、その人のニーズに合わせて、治療を行っています。

私が聞いたように、非常に高額の治療を、長期間続けるように指導する施設もありますので、金額には要注意です。

また、医療機関以外では、抗生物質を使うなどの医療行為ができませんので、治らないまま、だらだら治療だけ続けるようなこともあるようです。

このようなことも要注意事項です。

以上、記載したことを、まとめて、表にしておきますので、ご覧ください。

 金額利点欠点再発のしやすさ医療機関のみの治療
健康保険を使った投薬2千円~3千円複雑な施術を必要としない効果がないときがある再発しやすい
ワイヤーやプレートを使った治療2万円~数十万円手術を必要としないなかなか治らない場合がある再発することがある
健康保険を使った手術1か所約7500円(3割負担)ほとんど再発しない爪の幅が狭くなるほとんど再発しない

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